パーキンソン病では、実際のバランス能力と、自分自身が感じているバランスへの自信が一致しないことがあります。こうした「ズレ」は balance discordance と呼ばれ、転倒リスクや活動量との関連が注目されています。
Albrechtらの研究(npj Parkinson’s Disease, 2026)では、高強度のバランス・歩行トレーニング(HiBalance) が、このbalance discordanceを改善するかどうか、さらにその変化に日常の活動量や座位・低活動時間が関係するかどうかが検討されました。
研究には、2つの臨床試験から計97名のPD患者が含まれました。HiBalanceは、1回1時間、週2回、10週間実施され、姿勢制御、感覚統合、運動敏捷性、デュアルタスクなどを含む比較的チャレンジングな内容でした。
Predicted ABC = 80.7 + (−1.8 * TUG)・・・・・・(1)
Balance discordance = Actual ABC − Predicted ABC・・・・・(2)
Balance discordanceの正の値は「実際の能力に比べて自信が高い」、負の値は「自信が低い」状態を示します。
全体としては、介入後にdiscordanceは大きく変化しなかった
まず、介入前後でbalance discordanceそのものが変化したかを調べたところ、全体では有意な変化はみられませんでした。つまり、HiBalanceによってバランス能力そのものが改善しても、「自分の能力をどう認識しているか」という部分までは一様には変化しなかったことになります。
ただし、「座位・低活動の時間」が変化の仕方に影響する可能性
回帰分析では、介入前のdiscordanceが介入後のdiscordanceを強く予測していました。一方で、介入前discordanceとsedentary timeのinteractionもみられ、座位・低活動時間が多い人ほど、介入後にdiscordanceが0に近づく傾向が示されました。
特に、より臨床的な集団であるImplementation cohortでは、このinteractionが有意でした。介入前に座位・低活動時間が長かった人ほど、トレーニング後に「実際の能力」と「自信」のズレが小さくなる傾向がみられました。
著者らは、活動量の少ない人では、HiBalanceによる挑戦的な課題や成功体験が、自分の能力を見直す機会になった可能性を指摘しています。
臨床的にどう考えるか
この研究からは、バランストレーニングを行えば、必ずしも「実際の能力」と「自己認識」が同時に改善するわけではないことが分かります。特に、もともと活動量が少ない人では、身体機能への介入が自己認識の修正にもつながる可能性があります。一方で、活動量が比較的高い人では、身体トレーニングだけでは十分でない可能性があり、恐怖心や自己効力感などに対する心理的アプローチも重要かもしれません。
Sedentary behavior modifies the effect of balance rehabilitation on balance discordance in Parkinson’s disease. Franziska Albrecht, Sarah J. Conklin, Andrew Hooyman, Daniel S. Peterson, Jason K. Longhurst & Erika Franzén.
npj Parkinson’s Disease volume 12, Article number: 98 (2026) https://www.nature.com/articles/s41531-026-01357-0
